金城一紀著『GO』やっぱり映画より原作のほうが面白い

なぜか20年前の直木賞受賞作を読むことになりました。

面白かったです。

 

GO (角川文庫)

GO (角川文庫)

  • 作者:金城 一紀
  • 発売日: 2012/10/01
  • メディア: Kindle版
 

 

他の本も読んでみようかと著作リストを見てもあまり小説は書いていないんですね。テレビドラマの脚本の方へ進んだということでしょうか。

 

この『GO』、今さら私が言うまでもなく窪塚洋介さんと柴咲コウさんの主演で直木賞受賞の翌年2001年に映画化され、その年の映画賞総なめっていうやつです。

 

amazonプライムで映画も見てみました。だいたい原作を読んで見る映画というものは面白くないものでやはりそうでした(ペコリ)。

窪塚さんはぴったりだと思いますが、柴咲さんはちょっとばかりイメージが違っていました、と感じたんですが、なんと! ウィキペディアによれば「原作者である金城一紀が「映画化する際の桜井は柴咲コウ」と最初から彼女をイメージして」いたらしく、へぇーそうなんだ! とびっくりしました。

 

内容は金城さんの半自伝的小説で在日韓国人杉原の青春物語です。恋愛あり、友情あり、喧嘩あり、家族ものありという青春物語に必要なものはすべて入っています。

 

恋愛は、相手の女性桜井が子どもの頃から父親に「韓国とか中国の人は血が汚い」と刷り込まれてきているだけに青春のほろ苦さなんてものではなく相当しんどい思いを味わいます。

ただラストシーンは半年後にこの桜井から呼び出され再びいい関係に戻ります。桜井がどのように乗り越えたかは一切書かれていませんのでこのあたりはエンタテイメント性が強いかなと感じます。

 

杉原の国籍はもともとは北朝鮮籍で中学までは朝鮮学校に通っています。かなりやんちゃな生徒で、地下鉄の電車が駅に入る直前に線路に飛び降りて轢かれないように走り切るなんてことをやったりします。高校からは日本の高校に進み、在日ということで目をつけられますがとにかく喧嘩は強いですので負けることはありません。

朝鮮学校時代の友人(というよりダチ)や先輩、高校時代の喧嘩相手のヤクザの息子などが登場しますが、いちばん重要なのは朝鮮学校時代の友人正一(ジョンイル)です。正一は秀才ですが学校の強圧的な教育に強い疑問をもっている点で杉原と気が合い、高校は別れても親しく付き合い、杉原にこれを読めあれを読めと本を貸してくれます。

 

正一が貸してくれたシェイクスピア全集

名前ってなに?
バラと呼んでいる花を
別の名前にしてみても美しい香りはそのまま

という『ロミオとジュリエット』の中の一節がテーマと言えばテーマになっています。

 

その正一はある日、すごいことを話したいんだ、次の日曜日会おうぜ、と電話してきます。しかし、会うことはかないません。死んでしまいます。

駅のホームにチマチョゴリの女子高生がいます。日本人の男子高校生たちがいます。そのひとりが女子高生に告白に行こうとしています。仲間にひとりがこれ持っていれば気合が入るぞとバタフライナイフをもたせます。女子高生に声を掛けます。女子高生は以前突然肩を殴られたことがありその記憶が蘇り怯えます。

その時ホームに正一がやってきます。正一は後輩の女子高生が絡まれていると感じ間に割って入り男子高校生を押し返します。そしてもみ合い、男子高校生が開いたバタフライナイフが正一の喉に突き刺さります。

 

そこの誰ひとりとして悪意などもっておらず、ましてや殺意などあろうはずがないのに、こうしたことが起きてしまう社会の中に女子高生も正一も、そして刺した男子高校生も置かれているということです。

 

正一の父親は在日コリアン一世の元ボクサーです。世界2位になった実力を思っており子どもの頃から杉原にボクシングを教えています。

ある時中学生の杉原がやんちゃをして警察に補導されたときには父親は警察に行くやいきなり杉原に殴りかかり、警官がお父さん、死んじゃいますよと止めに入るまで殴り続け、そして帰り際には杉原に鑑別所(だったかな?)に入らずに済んでよかったな、感謝しろというような父親です。

 

その父親は自分はマルクス主義者だと公言しいろいろな本を読む人物でもあります。その父親が、母親がハワイへ行きたいと言い出したことを口実に朝鮮籍から韓国籍に変えます。これは杉原によれば、きっと杉原の将来のことを考えてのことだったんだということです。

 

映画では恋愛物語が割と前面に押し出されていますが、「血が汚れている」とまですり込まれてきた人物がいかにそれを乗り越えたかにまったく触れられておらずかなり物足りなく感じ、むしろ両親、特に父親との関係や正一たちとの友情や人間関係のほうが書き込まれている印象を受けます。

 

で、これを読んであらためて自分自身が在日韓国人や朝鮮人への差別の実態を知らないなあと思いいたりいろいろ読んでみることにしました。もちろん歴史的事実は知っていますし、差別があることも、在特会元会長の桜井誠氏が東京都知事選で約17万8000票を獲得したことも知っています。

 

でも、それで理解しているとは言えそうもありません。

 

まずここらあたりから読んでみましょう。 

在日朝鮮人 歴史と現在 (岩波新書)

在日朝鮮人 歴史と現在 (岩波新書)