日本は秘密裏に「集団免疫」作戦をとっている?

日本の新型コロナウイルス対策の方向性が一向にみえません。 自粛を訴えるだけで、それが何にもとづいているのか、この先どういう目標を持ってやっているのか、専門家も政府も何も語りません。

しかし、このインターネット時代、素人でもちょっとググればいろんなことがわかってきます。どうやら日本はあまりよろしくない方向へ向かっているようです。

PCR検査は重症者に限られている

現在の日本の新型コロナウイルス対策では、感染者の洗い出しであるPCR検査を帰国者や接触者をのぞいて重症者に限っています。

厚労省が発表している3月28日付の都道府県別PCR検査数と陽性者の人数です。

新型コロナウイルス陽性者数とPCR検査実施人数(都道府県別)(2020年3月28日掲載分)

東京都を見てみますと、検査人数 2,269人、陽性者数 305人です。全国合計の検査人数はわずか 26,105人です。

新型コロナウイルス感染症の現在の状況について(令和2年3月28日版)

PCR検査を受けるためには、現在でも「37.5度以上の発熱が4日以上続いたら」云々というガイドラインは維持されていますので、仮に感染していても軽症者は検査しないという方針に変化はないでしょう。

参考程度に、世界の検査数を Our World in Data が各国データを3月20日付でまとめたもので見てみます。

How many tests for COVID-19 are being performed around the world? – Our World in Data

人口比を考えれば圧倒的に少ないです。下が100万人あたりの検査数です。

世界の状況を見てみれば、日本だけ特別ということは「神の国日本」なんていう思想の持ち主でもない限り納得できることではありませんので、常識的に考えれば、現状、日本には軽症者あるいは無症状病原体保有者が相当数いることはまず間違いないでしょう。

実際、接触者でも無症状病原体保有者が相当数いるようですし、感染経路不明者もかなり増えてきています。

日本のコロナ対策は封じ込め?

なぜ日本はPCR検査を積極的にやらないのでしょう?

日本政府はコロナ対策方針を明確にしていませんが、おそらく医療崩壊を避けるために水際対策(とっくに破られている)とクラスターつぶしによる封じ込めだと思われます。

ここで疑問が沸いてきます。

封じ込めるべき対象(病原体)がどこにいるのかわからないのに封じ込めは可能なのか?

おそらく、そこで出てきた対策が「自粛要請」でしょう。

自粛要請は封じ込めに有効か?

無症状病原体保有者が数多くいる前提で考えれば、自粛は感染リスクを避けるとともに感染させるリスクも避けるということになり、それはそれで有効だと考えられます。

ところが当然経済活動を完全に停止させない限り人は外出しますし、私も外出しますし、東京都や大阪府のやり方は、この週末の外出を自粛してくださいと経済的損失を恐れているのでしょうが、唐突に高飛車に目先のことだけを言い出すだけで、その方針を明確にしないために脅しにしかなりません。

感染者洗い出しであるPCR検査を限定的にしか行わず、どこに病原体保有者がいるかわからな状態で新型コロナウイルスを封じ込めるためには、ある一定期間、完全に経済活動を停止し、全国民が家にこもり、発症した重症者のみ医療施設に隔離するしか方法はありません。

ヨーロッパやニューヨークでやられているロックダウンとはこういうことだと思います。今後どうなっていくのかはわかりませんが、積極的にPCR検査をやっているヨーロッパでさえ先が見えないわけですので、これを日本でやれば、2週間や3週間では到底終息するとは考えられません。

いずれにしても感染者を洗い出さない日本のやり方で、なおかつ現状のような無方針の「自粛要請」ですまそうとするならば、永遠に終わらないもぐらたたきを続けるしかなくなります。

日本のコロナ対策方針が見えない

日本のコロナ対策は、その方針が明確に示されていないことが一番の問題です。

感染症対策には封じ込めではなく「集団免疫」という考え方があるそうです。要は、ある集団の中ではたくさんの人が感染し免疫を持つことでやがてその感染症は終息するだろうという考え方のようです。適当なことは言えませんのでいろいろググって読んでみてください。

MIT Tech Review: 新型コロナ対策で英政府が模索した「集団免疫」とは何か?

この記事がわかりやすいです。冒頭を引用しますと、

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)を永久に食い止める方法は大きく分けて3つある。第1の方法は、人々の自由な移動や集会を極端に制限する一方で、積極的に検査を実施して感染を完全に防ぐことだ。今やウイルスは100か国以上に広がっているため、この方法には無理があるかもしれない。第2の方法は、すべての人を感染から守れるようなワクチンだが、開発途上である。

第3の方法にも効果があるかもしれないが、想像するのは恐ろしい。その方法とは、十分な人数が感染するまで待つというものだ。

この第3の方法が「集団免疫」という方法で、最終的にはおよそ60%の人が感染すれば終息することが計算上導き出されるとのことです。

この引用文でもわかるとおり、日本政府のとっている方法は、一見「人々の自由な移動や集会を極端に制限する」第1の方法にみえますが、それに続く「積極的に検査を実施して感染を完全に防ぐ」ことをしていませんのでやっていることがチグハグだということがわかります。

イギリスのジョンソン首相が一時この「集団免疫」の方法を取ると発表し、その後猛反発を食らって方針転換、結局現在のように「積極的検査と行動制限」による封じ込め方針をとっています。

ということを考えていけば、いくら日本政府が〇〇でもこうしたことを知らないわけはありませんので、あるいは日本政府は秘密裏に「集団免疫」方針をとっているのではないか、つまりチグハグな対策をしているのではなく、わかって「集団免疫」理論を採用しているのではないかということです。

日本政府の方針は秘密裏の「集団免疫」か?

あり得なくないですね。これだけいろいろなところから、なぜPCR検査をもっとやらないのだと言われても一向にやろうとしませんし、それに答えようともしません。

なぜ「秘密裏」なのか?

予想される死者数でしょう。ジョンソン首相が猛反発を食らったのはその死者数です。実際予想など誰にもできなくほとんどギャンブルだと思いますが、数十万人という説もあります。

そりゃ、仮に「集団免疫」方針を発表すれば猛反発とともにパニック状態になるでしょう。それを恐れて言うに言えないのかもしれません。日本の医療体制や公衆衛生環境から甘く見てなんとかなるだろうと考えている可能性もあります。あるいは、「精神論による成り行き任せ」ということも考えられますが、それですと「インパール作戦」みたいなもので自滅ですね。

実際、どう考えても現在のやり方で短期に終息するとは思えませんので長期化必至です。

これはうがった見方でも何でもなく、常識的に考えればここに行き着きます。

仮に他の国が短期終息に成功した場合、日本からの渡航は禁止されますし、経済的にも遮断されるかもしれません。

呼吸器内科医が解説!  新型コロナウイルス感染症 — COVID-19 —

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