橋本健二著『新・日本の階級社会』 労働者階級がアンダークラスを抑圧する?

新・日本の階級社会 (講談社現代新書)

新・日本の階級社会 (講談社現代新書)

 

 

厚労省発表の「毎月勤労統計調査」で特別監査委員会が組織的な隠蔽は求められなかったとの検証結果を発表していましたが、10年以上もわかって不正をしていたのに組織的不正じゃないって、どういうこと?

 

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「変えた方が良いと思ったが」放置 でも組織的隠蔽否定:朝日新聞デジタル

 

 

本当に、この数年、特にこの2,3年、こういうパターン、不正が発覚し、調査委員会のようなものが設けられ、ほぼ同じように不正はあったが組織的ではないで済まされてしまいます。

 

多くの人が、その原因が安倍政権への忖度にあることがわかっているのに、何だか、あれこれ言うことに疲れちゃったのか、言えば言うほどアンチが増えるという悪循環で袋小路に入っている感じです。

 

 

で、この『新・日本の階級社会』ですが、この本も官庁発表の統計などを用いて、格差社会と言われて久しい今の日本の社会構造の変化を解き明かし、格差社会を解消し得る勢力となる階級は何かと探ろうとしています。

 

階級という言葉を聞きますと、資本主義社会はブルジョワジーとプロレタリアートの階級闘争を経て共産主義社会へと至るというマルクス主義を思い浮かべますが、今ではそう単純ではないことは誰もが思うことですし、そもそも「階級」というものが果たして存在しているのかとも思います。

 

著者は、現在の日本の構造をデータに基づいて、資本家階級、新中間階級、労働者階級、旧中間階級の四階級分類から始め、4+1の5つの階級構造が当てはまるといいます。そのデータを週刊朝日が図式化したものが次の図です。

 

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あなたはどの階級? 「格差社会」から「階級社会」に落ちる日本 (1/2) 〈週刊朝日〉|AERA dot. (アエラドット)

 

この図を見ますと、アンダークラスという階級が存在していますが、これについて、

これまでの労働者階級は、資本主義社会の底辺に位置する階級だったとはいえ、正社員としての安定した地位をもち、製造業を中心に比較的安定した雇用を確保してきた。これに対して激増している非正規労働者は、雇用が不安定で、賃金も正規労働者には遠く及ばない。(略)結婚して家族を形成することが難しいなど、従来ある労働者階級とも異質な、ひとつの下層階級を構成し始めているようである。労働者階級が資本主義社会の最下層の階級であったとするならば、非正規労働者は「階級以下」の存在、つまり「アンダークラス」と呼ぶのがふさわしいだろう。

と言っています。

 

さらに、

今や資本家階級から正規労働者までが、お互いの利害の対立と格差は保ちながらも一体となってアンダークラスの上に立ち、アンダークラスを支配・抑圧しているといえないだろうか。いわば四対一の階級構造である。 

とまでなんとも鋭いツッコミを入れています。

 

これ、怖いですね!

 

この本、目が回るくらいのデータが出てきますので、正直、細かく読みきれません。さらに

「階級は固定化しているか」

「女たちの階級社会」

「格差をめぐる対立の構図」

へと進んでいき、格差があれば当然、格差をなくす必要があるとの主張と、自己責任だから放っておけばいいとの主張の対立が生まれます。

 

その格差に対する主張と、政治的に右派的であるか左派的であるかの関係に踏み込んでいきます。ただ、右派的とは軍備拡大を支持し排外主義に寛容なことと単純化している上に、データとは言っても個人の意識調査は所詮アンケートでしょうから、この点については、どの程度信頼性があるかはかなり疑問ではあります。

 

ただおそらくそうだろうと思えることは、日本では自己責任論が蔓延しており、所得の再分配を支持する人は、特に4+1の4の層では、自身が労働者階級であってもさほど多くはないだろうということと、アンダークラスに排外主義的な傾向が強く、従来の左派的イメージは当てはまらなく、仮に社会主義的革命(改革)が起こりうるとしてそれを主体的に担う階級はアンダークラスではないだろうということです。

 

最後に「より平等な社会を」として、格差縮小への提言もなされています。

賃金格差縮小の点から

  • 均等待遇の実現
    同一労働同一賃金ということでしょうか
  • 最低賃金の引き上げ
  • 労働時間短縮とワークシェアリング

 

所得の再分配の点から

  • 累進課税の強化
  • 資産税の導入
  • 生活保護制度の実効性の確保
  • ベーシック・インカム

 

そして、所得格差を生む原因の解消の点から

  • 相続税率の引き上げ
  • 教育機会の平等の確保

 

どれも自民党政権では無理なことばかりです。

 

で、著者の考えとしては、まず社会主義革命によって階級そのものをなくす方法は、そもそも階級をなくすことは不可能で、またなくすことが望ましいとも言えないので考えないと言い、

もし格差社会の克服を一致点とする政党や政治勢力の連合体が形成されるなら、その支持基盤となりうる階級・グループは(略)アンダークラス、パート主婦、専業主婦、そして新中間階級と正規労働者の中のリベラル派である。

格差社会の克服という一点で、弱者とリベラル派を結集する政治勢力の形成。格差社会の克服は、したがって日本社会の未来は、ここにかかっているのである。 

と終えています。

 

どうなんでしょう?

 

週刊ダイヤモンド 2018年 4/7 号 [雑誌] (1億総転落 新・階級社会)

週刊ダイヤモンド 2018年 4/7 号 [雑誌] (1億総転落 新・階級社会)