姫野カオルコ著『彼女は頭が悪いから』 いやあ~な小説だね、これ。

新聞の書評で引っかかってしまった本です。

引っかかった自分を棚に上げておいてなんですが、タイトルが下世話ですね。結構売れているという話もあり、狙い通りということでしょう。

姫野カオルコ著『彼女は頭が悪いから』

文藝春秋BOOKS

2016年に起きた「東大生強制わいせつ事件」を題材にしたフィクションです。

著者がどの程度の取材をしたのかはわかりませんが、こうしたセンシティブな問題を、2年後の今、ノンフィクションではなくフィクションで書くというのはどうなんでしょう? フィクションとうたって逃げているということがなければいいんですが、内容は当事者の内面に深く入り込んでいますので、ノンフィクションで書くべきじゃないかと思います。

題名もそうですが、帯には「私は東大生の将来をダメにした勘違い女なの?」と、なぜ被害者である女性への視線を強調したコピーにするのでしょう。「?」をつけている逃げですよね。

冒頭はこうです。

いやらしい犯罪が報じられると、人はいやらしく知りたがる。
被害者はどんないやらしいことをされたのだろう、されたことを知りたい、と。
報道とか、批判とか、世に問うとか、そういう名分を得て、無慈悲な好奇を満たす番組や記事がプロダクトされる。
なれば、ともに加害者と同じである。

なんだか著者自身は違うみたいですね。

で、一応最後まで目は通しましたがちゃんとは読んでいません。数十ページくらいまで読み進んだものの、読み物としても面白くありません。それに実際にあった2年前の事件がフィクションで書かれていると思えば、読みながら、これ作り話かもしれないとの思いが浮かび集中できません。

それにそもそも東大というブランドが存在するという前提で書いていますが、このネット時代、それが通用する世界はもうさほど広くないんじゃないかと思います。だって片山さつきに、舛添要一に、佐川宣寿を始めとするあの一連の公文書改ざん事件に名前が上がった官僚に、それにかなり古い話ですが、あの「ノーパンしゃぶしゃぶ」だって大蔵官僚ですからおそらく東大卒でしょう。

ちょっと話がそれましたが、こういう題材は、きちんと自分の立ち位置を明確にして書くべきだという話です。