柄谷行人著『憲法の無意識』現在の新自由主義的(帝国主義的)段階も、(第一次世界大戦と同様に)戦争を通して収束する蓋然性が高い

柄谷行人著『憲法の無意識』=憲法九条の文字通りの実行が世界同時革命の端緒となる
の続きといえば続きです。

第4章のテーマは、「憲法」というより、「現在は、世界史的に見てどういう段階にあるのか? そして、この先に何に至るか?」です。

憲法の無意識 (岩波新書)

憲法の無意識 (岩波新書)

 

どんな社会も3つの交換様式で成り立っている

柄谷氏は、どんな社会も次の3つの交換様式で説明(理解)できると言います。 

  • 贈与-お返し
    贈与を迫り、お返しを迫る「呪力」のような力
    「原始的社会」に強く現れる
  • 支配-服従、または収奪-再分配
    服従すれば他の暴力から守られる
    税が公共事業などで再分配される
    「国家」はこの交換様式で成り立っている
  • 貨幣-商品
    交換は強制ではなく自由意志でなされる
    貨幣と商品の関係は非対称であるため、階級支配をもたらす
    現代社会に支配的な交換様式

歴史的には、どんな社会構成体もこの3つの交換様式の接合体であり、その1つで成り立つわけではなく、どの様式が支配的かで違ってくるとみます。

たとえば、近代になると、交換様式 C が支配的になり、貨幣経済が浸透して資本主義社会が成立するわけですが、交換の履行を保証する国家 B が必要であり、また A の原理は徐々に解体されてはいきますがなくなるわけではなく、「ネーション」として想像的に回復されますので、近代国家は C と A と B の接合、資本=ネーション=国家という形を取ることになるわけです。

交換様式 D 純粋贈与=世界共和国

で、これらの図には4つ目の D があるわけですが、柄谷氏はここに将来実現されるべき「世界共和国」を置き、それに対応する交換様式 D として「純粋贈与」(普遍宗教という言葉も使っている)を持ってきます。

現在われわれが生きている世界は、もちろん交換様式 C が支配的となっている「近代世界システム」ですが、その近代世界システム(世界資本主義)の歴史的段階を示したのが次の図です。

 この図を理解するためには、いくつかの重要なポイントがあります。

  • 近代世界システムにおいては、「帝国」は成り立たず、帝国主義になる
    • 「帝国」の支配構造は交換様式 B(支配と服従)にもとづくもの
    • 近代の帝国主義は、交易の拡張、つまり交換様式 C の拡張を求める
    • 交換様式 C が優位にあると多数の民族や国家を統合する「帝国」成り立ち得ない
  • 帝国主義的段階を経てヘゲモニーを取った国家は、自由主義的経済政策をとる
  • ヘゲモニー国家が衰退して、次のヘゲモニーの座を争う状態が帝国主義
  • 近代世界経済の中で、ヘゲモニー国家は、オランダ、イギリス、アメリカの三ヶ国しかない
  • 1980年代以降のアメリカの経済政策は、新自由主義と呼ばれるが、実は反自由主義であり、新帝国主義と呼ぶべきもの

ですので、現在はどの段階かといいますと、ヘゲモニー国家アメリカの没落により、次のヘゲモニーを争う段階、つまり(新)帝国主義状態にあるということになります。

次のヘゲモニー国家は中国、またはインド

次のヘゲモニー国家がどこかについても言及しています。

中国、またはインドだと言います。ただし問題は、中国やインドの経済発展そのものが世界資本主義の終わりをもたらす可能性があるということです。

産業資本は成長出来なければ「死」が待っており、そうならためには次の3つの要件が必要になります。

  • 産業的体制の外に「自然」が無尽蔵にあること
  • 資本制経済の外に、「人間的自然(人間という自然)」が無尽蔵にあること
  • 技術革新が無限に進むこと

簡単に(適当に)言いますと、資本主義は資源(人的も含む)を食いつぶしたら終了ということだと思います。現在、それはいよいよ近づいているということでしょうか、柄谷氏は言います。

1990年以降、この3つが急速に失われており、結果として、現在の新自由主義的段階も、(第一次世界大戦と同様に)戦争を通して収束する蓋然性が高いと予想しています。

世界資本主義の終焉、そして世界戦争? 

ただ、現在の状況は世界戦争を経なければ解決できないというわけではなく、それを避けるために、唯一日本ができることは、憲法九条を文字通り実行することだと結論づけます。

3章までの結論を補強する4章ということになります。

憲法九条を文字通り実行するって言ったって、道筋を示さないと何も始まらないですし、待っていても革命はやってこないと思います。