海を越える日本文学/張競

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日本の文学作品の翻訳事情を知るための入門書としては、まあまあ良い本だと思うが、この手の本にしては、記述が系統立っておらず、ややとりとめのない印象を受ける。ただ、さすがに中国での日本文学の受け取られ方については、記述も多く、説得力がある。

なぜ村上春樹が海外で評価されるのか?といった宣伝文句に、ついつい手に取ったわけだが、翻訳しやすいことや日本人じゃないと理解しにくい情報がないことがあげられ、特に東南アジアでは、村上春樹のあつかう、特に「ノルウェイの森」の1970年あたり以降の高度成長期という時代背景を、今、自分たちのこととして理解しやすくなっているのではないかと説いている。

東南アジアでの人気の理由はどうだか分からないが、村上春樹を続けざまに読み始めて以来、なぜ彼の作品が海外で評価が高いのかとの問いに対して、私なりに、平易な文章であり、個人の心情を深く記述せず、ほとんどが一人称であることなど、翻訳しやすい、つまり日本語を母国語としない場合が多いだろう翻訳者にも理解しやすいのだろうと思っていたので、それらは納得できるものだった。

翻訳の具体例として、幸田文の作品(作品名は忘れた)の英訳と村上春樹のそれとを比較しているあたりは、全くその通りで、村上春樹の文章には英訳に苦しみそうな表現がほとんどない。逆に言えば、これでは、日本語として想像力を刺激される部分がないと感じている。